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若葉台の作家、水野翠さんの絵本の世界 ~SOLA 若葉台文化祭にて~

若葉台市民図書館SOLA開設10周年記念 水野翠先生の絵本の展示

 

私たちの暮らす若葉台には、多才な方が実はとても身近に

お住まいだったりします。

そのお一人、水野翠(みずのみどり)先生という

作家さんをご存知ですか?

絵画や本の装丁、絵本の執筆などで活躍されている方です。

 

私が水野先生の作品を知るきっかけとなったのは、

昨年の11月に行われた若葉台文化祭です。

 

ご近所にこんなに素敵な先生がいらっしゃるなんて、

若葉台ってすごい!

先生と作品のことを子どもはもちろん

お父さん、お母さん世代の皆さんにも知ってほしい!

ぜひ水野先生にお会いしてお話を伺えたら…

 

そう思いインタビューをお願いしたところ快く

引き受けてくださいました。

子どもを尊重して絵を描く

若葉台文化祭の会場の一つになっていた

若葉台市民図書館SOLAでは、

水野先生の原画とスケッチ展が開催されました。

そこで『はなのいろはどこへいくの』という絵本の

原画の展示がありました。

 

絵本のストーリーを少しご紹介します。

主人公のあかねは赤い色が大好きで、お花屋さんで

買ってもらった赤い花を大切に育てます。

その赤い花をちょっと不思議なおばあさんから借りた

めがねで見ると…。

花の赤い色が露のようになり、ふわっと空へ上がって

いくのが見えました。

 

 

こちらが原画です。

淡い色の優しい絵なので、素人の私は水彩や色鉛筆で

描いたような印象を受けました。

でも間近でよーく見ると、筆の流れと絵具の凸凹から

油絵だとわかります。

「原画」を目にするとこんなにも立体感と温もりが

伝わってくるんですね。

 

水野先生のお話の中で、「子どもを尊重する」という

言葉が印象的でした。

 

『子どもに対しても「お空」じゃいけなくて、

ちゃんと「空」を描かなきゃいけないし、

「お花」じゃなくて「花」をきちっと描きます。

心を込めて、子どもを尊重して、尊敬して一所懸命

描かなきゃいけないの』

 

と水野先生はおっしゃいます。

 

 

水野先生は、二十歳の頃は絵本というのは“かわいい”

ものだと思っていたので、「お空」や「お花」として

表現すると捉えていたそうです。

こちらの絵本では、瑞々しい花の美しさが

「お花」ではなく「花」として描かれていますね。

 

また、「過ぎた時は戻ってこない」ということが

お話の中で触れられています。

編集者の方からは最初は「子どもが読む本なので

必要のない表現ではないか」と削除するよう

勧められたそうです。

ですが、水野先生の思いを尊重して残ることに

なりました。

 

「過ぎた時は戻ってこないけれど、夢中になった

大事なもの、大事な人、夢中になったできごとを、

忘れないでいようね」と、

「見えないものを想像してみようよ」

という思いを読者の子どもにも伝えたいと思った

そうです。

絵本の中で「遊ぶ」

こちらの2冊の絵本には、女の子や動物がたくさん

登場します。

 

『うまさん うまとび』はタイトルどおり、

言葉遊びにあふれた絵本です。

 うまさんが馬飛びしたり、わにさんが輪になって

踊ったり。

子どもの好きな言葉遊びが満載です!

 

『みつあみ みつあみ』の絵本は、三つ編みに憧れる

女の子のお話。

カメレオンの舌やウサギの耳、ネコのしっぽなどを

想像で三つ編みしちゃう様子を描いています。

 

 

 また、『わらって わにさん』と『あめのむこう』の

登場人物は、ワニ、ニワトリ、リス、スカンク、クマ、

マントヒヒ。

お気付きだと思いますが、しりとりになっていますね。

 

 

そして他にも遊び心にあふれた仕掛けが!

 

『みつあみ みつあみ』では女の子の横に小さな

キリンが描かれていて、パラパラ漫画になっています。

「同時に女の子の表情や手が動くからページを

パタパタと前後させて遊んでほしいの」と水野先生は

おっしゃいます。

 

『わらって わにさん』と『あめのむこう』には、

「あのとき出てきたカエルだ!」と読み込むと分かる

さり気ない登場人物もいます。

 

 

『ママはまいあさディメトロドン』というお話は、

ずばりママが朝起きないお話。(耳が痛い!笑)

ディメトロドンとは恐竜よりずっと以前に生息していた

単弓類(たんきゅうるい)で、ワニのような格好をした

生き物です。

ママが起きない様子を魚→両生類→単弓類→哺乳類→人類

になって立ち上がって歩く。

それでやっと起きられる、というふうに描写しています。

例えがとってもユニークですよね。

 

 

「絵本の中でこっそり遊ぶの」とほほ笑む水野先生は、

絵本作家として読む人に楽しんでもらうことと、

ご自身も楽しむことを大切にされているように感じました。 

 

このように子どもを尊重することと遊び心を散りばめた

絵本だから、大人も子どもも水野先生の絵本の世界に

ぐっと引き込まれるんでしょうね。

水野先生からのプレゼント!

こちらはSOLAで展示をするにあたって、

水野先生からのプレゼントです。

 

くまさんが熊手でどんぐりを集めているのは、

『うまさん うまとび』の下書きのコピーです。

貴重な下書きと絵本を同時に見比べることが

できるんですよ。 

「↑0.5cm」や色の指定のメモがされていて、

絵本ができるまでの様子が垣間見れます。

コピーなのでもちろん自由に手に取って読んでも

大丈夫!

この機会にぜひご覧ください♪

 

紙粘土の作品は、膝の上で本の読み聞かせをする

お父さんと子ども。

「こんな姿、あるある~!」とほっこりしますね。

 

胴体に芯を埋めてパーツごとにつなげたりはせず、

ひとつの粘土のかたまりからこねて形作ったそうですよ。

「お子さんと一緒に作ってみてね」

と教えていただきました。

 

若葉台の鳥はピコちゃんだけじゃなかった!

団地の地図も水野先生の手にかかれば、

かわいい“若葉台に変身です。

絵本の展示の中にちょこんと飾られているので、

ぜひ探してみてください♪

家族がモデルの絵本だからこそ

2011年に開催したヨコハマトリエンナーレ。

その連携プログラムとして若葉台は「空の芸術祭」として参加し、

水野先生も旧西中で個展を開催されました。

 

さて、これまでご紹介した水野先生の作品には、

お子さんやご自身がモデルになっているものが

あります。

 

水野先生のお子さんは小さい頃、

「あかねという名前を付けてほしかった!」

言うほど赤い色が大好きだったそうです。

そう、『はなのいろはどこへいくの』のあかねの

モデルです。

 

『ママはまいあさディメトロドン』のママはなんと、

水野先生ご自身!

先生も朝が弱いんだそうです。

もしかしたら水野先生のおうちの朝の様子もこんな

ふうだったのかな、なんて想像するととっても

親近感が湧いてしまいます。

 

また、『はなのいろはどこへいくの』で描かれて

いる森が若葉台のすぐお隣の三保市民の森を

イメージしていたり、実はとても身近なところが

舞台になっています。

 

 

今回はご紹介しきれませんでしたが、他にも

お子さんとの会話が元になってできたお話もあり、

子どもを持つ親として共感する作品ばかりです。

――うちの子もおんなじ!

――そういえば自分が小さい頃そうだったなぁ

――きょうだいがこんな感じだった!

と、とても温かい気持ちになります。

 

ふわっと心に届く水野先生の絵本の世界に、

ぜひ触れてみてくださいね。 

 

 

 

SOLAでは今回ご紹介した原画や下書きの展示を

今後も常設していく予定です。

また、本の貸出しも行っています。

 

水野先生の絵本は、SOLAの他に

若葉台地区センターでも読むことができます。

『みつあみ みつあみ』

『うまさん うまとび』

『はなのいろはどこへいくの』

『わらって わにさん』

がそろっていますので、ぜひ足を運んでみてください。

 

 

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(みどり)